【コラム#9】医師は何でも知っている? 〜知っていること、知らないこと〜
ある会社の方から「インタビューに同席して、一緒に話を聞いていただきたい」とご依頼をいただいたことがありました。
「この先生、いいな~」と思っている著名なドクターに、ある開発品に対する意見を聞きたいとのことでした。新製品を開発する前に、このようなインタビューを実施するのは大事だし、とてもいいことだと思います。
しかしながらそのドクターの専門分野をよくよく調べてみたところ、大きな問題点があることに気づきました。その先生の専門分野は、開発している製品の分野とは一見近いようで、実は少しずれていたのです。開発中の製品の評価ができる分野の臨床医ではなかったのです。
素人目には診療科の名前が似ていると、「同じようなものかな」と思いがちです。ところがよくよく見てみると、実際に開発している製品の分野とは、内容が違っているケースが多々あるんです。
そうしてその先生に「これって本当にニーズありますか」と質問したとします。
仮に「それはいいニーズですね」と答えが返ってきたとしても、それはそれで問題なのです。
というのはその先生は、開発中の製品の対象とは、専門分野が異なるからです。将来のユーザーになるドクターではないのです。
逆に「それは私が自分で診療していないので、わかりません」と言われることもあります。
これは一見ちょっと冷たい印象があるかもしれません。でも実は、真剣に考えているからこそ出てくる言葉なんです。
「これは自分の専門分野ではないので、適切なアドバイスをしてくれるドクターのところに話を聞きに行った方がいい」ということを教えてくれているともいえます。
ドクターだったら、その分野に近い内容だったら、何でも知っているかというと、そうではないのです。臨床の現場というのは細分化しているので、現場によってやっていることも結構違います。
これを事前に理解した上で話を聞きに行く必要があります。そうでないと、せっかくインタビューに協力してもらっても、開発している製品に必要な意見を得ることができないからです。
ですからドクターに質問に行く前に、ぜひ考えていただきたいことがあります。
それは「本当にその先生でいいんですか?」ということです。
現在開発中の製品に対して、適切なフィードバックを得ることが期待できる専門分野の先生でしょうか?前提する条件とずれていないかどうか、事前によく調べて確認しましょう。
より良い成果につながるためにお困りのことがありましたら、気軽にご相談ください。