【コラム#8】既存品のバージョンアップのニーズとは? 新規と改良品はそもそも進め方が違う!
「新製品を開発したいのですが、どう進めていいかわからない」との相談を受けることがあります。ところがよくよく聞いてみると、現在の製品の仕様の一部を変更した製品であることが多いんです。これは改良品ということになります。
まだ世の中に普及していない新しい製品を、2番手、3番手として参入するのが新規の(De Novo)プロダクトです。これまでにない新しい市場を創出する必要があります。
これに対して改良品の場合は、既に市場があります。例えばスマートフォンのように既に世の中で普及していて、次のバージョンの新しい製品が出るのを待っている状態です。
初代のiPhoneは新規ということになります。iPhoneSEとかiPhone13といった新しいバージョンのものは改良品です。
改良品に関しては、新製品を最初に開発する時とは、進め方が違うところがあります。
新規の製品というのは、そもそも市場というものがまだ存在しません。まだ明確ではないニーズに対して、答えが存在しない状態で、手探りで進めるわけです。
改良品の場合は、そうではありません。
もう既に発売されている製品が、世の中に普及しています。お客様の声もたくさん集まっていて、市場が形成されている状態です。どんな目的やニーズがあって、どんな顧客層をターゲットにするかも明確になり、売り方も確立している状態です。
競合している他社よりも早くバージョンアップをした改良品を出すことと、全くの新製品を作って世の中に出すこととは、考え方も進め方も、根本的に違います。
だからお客さんが「新製品」という言葉を使っていても、それが新規なのか改良品なのか、見極める必要があります。
改良品のつもりでアドバイスしていたら、「まだ市場がありません」「やり方がわからない」と言われることがあります。
市場がないところで展開するから、新規の意味があるわけです。それなのに「既存市場がないとマーケットサイズも計算できませんよ」なんて言われたら、話が先に進まなくなってしまいます。
新規にもかかわらず、改良品だと解釈してアドバイスしてしまうと、このような齟齬が生じてしまうのです。
一方で、改良品の相談を受けた場合も、注意が必要です。既存の製品の改良品で本当にいいのかどうか、真剣に考える必要があると思うんです。
新型コロナウィルス感染症の影響で、世の中のニーズも大きく変化しています。アジアから安価な製品がどんどん輸入されている現在、日本の製品のシェアがだんだん小さくなってしまう可能性もあります。
5年先、10年先の未来を見据えた製品の開発も、今から準備する必要があるのではないでしょうか。