【コラム#4】“客観的”調査?-正しいデータが存在しない場合-

先日、当社のクライアント様から以下のようなご相談を受けました。

「ある疾患を治療する製品を開発しているのですが、その疾患を持つ一部の患者層だけに限定した調査をしたいんです。」

クライアント様はプロジェクトを根拠を持って前進させるためには客観的なデータが必要だとお考えなのだと思います。確かに物事を進める上で客観的なデータに基づくことは非常に重要です。

しかしながら、客観的なデータを信頼しすぎていないでしょうか?

実は今回のように一部の患者層だけに限定するような特異的なデータは統計を取ることができないため、利用可能なデータが存在しないことが多々あります。仮にデータが存在していた場合でも様々な前提条件のもとで正しいデータであることが多いので、恐らく製品の事業性評価への応用は難しい可能性が高いでしょう。

客観的なデータであれば良い、文献・論文になっていれば良いというのは事業性を評価する場合においてはバイアス(先入観)になり得ます。

例えば、開発者が先生に意見を求めて、先生からの回答に対して「それは先生の個人的な考えですよね?」とつい考えてしまいます。客観的なデータが存在しない場合は先生の臨床経験を基に回答してもらっていても客観的なデータでないと信用できないということがあります。

一方で、当然ですが先生の話を鵜呑みにもしてはいけません。

では、どのようにすれば良いのでしょうか。

大切なのは、腑に落ちるまで自ら現場で情報収集することです。

データが客観的か、主観的かという軸だけで判断するのではなく、大事なのは製品・サービスに十分な事業機会がありそうか、開発や事業のリスクが低そうかということを自分で情報を収集し理解できてから、物事を進めることが重要です。

さらに情報を収集し理解できるようになるために重要なことがあります。それは現場百遍です。自分で情報を収集し理解できている方々の共通の考えだと思います。

実際に医療現場に行き、現場にいる関係者と会話をすることで当初想定していた製品・サービスの領域の周辺も含めて、自分で課題の所在を捉えていくということができるようになります。客観的なデータや医師へのインタビューは課題の所在を捉えるための方法の1つなのです。この考え方を理解し実行することできっと自信を持って物事を前に進めることができるようになるでしょう。

このように「客観的なら良い」という先入観がないか一度見直してみてはいかがでしょうか。

About the author: 原陽介

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